Topcon 35-Lを買ったら予想を上回る写真が撮れて大満足した

フィルムカメラ

東京光学機械株式会社、いわゆるトプコンのレンジファインダー機だ。
一見ただの無骨なカメラだけど、ファインダー、レンズ、巻き上げ、そして写り、どれをとっても素晴らしい。

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発売は60年以上前

本機はレンズ固定式のレンジファインダー機である。1957年に発売された。執筆時点からだと63年前だ。

実は本機にはTopcon 35-Sなる前身モデルがある。仕様はほぼ同じなんだけど、唯一の違いがTopcon 35-Lがライトバリュー対応となったところ。ライトバリューを嫌う方が多いそうで人気なのはTopcon 35-Sの方らしい。
たしかにライトバリューはない方がいいけど、EV値の考え方も悪くないと思うんだけど・・・。

ところが本機は発売翌年の1958年に販売終了となってしまう。わずが1年だ。
今となっては理由は定かではないが、一眼レフに向かっていく時代の流れか、はたまた売れなかったのか、どうなんだろうか。
前身モデルを合わせても3年だし、案外流通量は少ないのかもしれない。

また付いているレンズがF2.8のTopcon 35-JLもある。こちらはどうもレンズ構成が異なっているとか。

中古カメラ屋さんに仕入れを頼んでいた

さて、このカメラは馴染みの中古カメラ屋さんに仕入れをお願いしていたものだ。フィルムカメラをはじめて1年も満たないが、馴染みと言えるお店ができたのは大きい。

わざわざお願いするほとでもないかもしれないが、このカメラはとある写真家が高評価をつけていたこともあり気になっていた。
ヤフオクや中古カメラ屋さんではそれなりに見かけるけど、雑に使われてきたのか状態の良いものが少ない。
同じ買うなら綺麗で状態の良いものが欲しく、馴染みの中古カメラ屋さんに仕入れてもらうよう頼んでいた。

すると1ヶ月ぐらい後だったか、カメラ屋さんから「入荷した」と連絡があったので勇足で向かった。
するとそこには大変キレイな本機が置かれていた。
店主がこれは美品だと断言するだけあって筐体はきれいそのもの。
状態も問題なく、シャッターは全速切れているし、絞りやヘリコイドはいたってスムーズ。強いて挙げるとファインダーに少しクモリがあるくらいで、二重像もキレイに出ている。

これは気に入った。買うと決心した。

ただ本機には値札がついていないので、店主との価格交渉の時間だ。
おいくらと聞くと、結構いい値段を言われた。頭の中の相場は1万5千円ぐらいだったから意表を突かれた。

ただ無理もない。いい値段を言われても仕方がないくらい状態がいい。またいい値段と言えど、決して買えない値段でないのが妙である。
ま、馴染みの店だし、なんかあったらすぐに泣きつけるし、サポート代を含めたらむしろネットでどこぞの馬の骨から買うよりも安いので持ち帰ってきた。

当然持ち合わせはなく、ATMに現金を下ろしに向かったのはいうまでもない。

外観は無骨だけど高級感が漂う

前面
背面

1950年代、日本がものづくり大国を目指して日夜職人たちが切磋琢磨していた時代の製品だ。
もうメッキの仕上げが素晴らしい。これだけでいかに気合が入っているか感じることができる。
事実、一昔前までは結構高値で取引されていたそうだ。4、5万円だっだ時もあるらしい・・・。

このカメラを特徴づけてるのが、正面に金色に輝くアルパタであろう。全体がシルバーでまとめられているからいいアクセントになっている。

本機は全体的にスレ・キズはごく少量で50年以上経っても当時の姿が偲ばれる。

巻き上げはダブルストローク

巻き上げはなんとダブルストロークだ。あのライカM3も前期型はダブルストロークだから、これはもうライカだ。・・・さすがに違うか。

冗談は別として巻き上げがなんとまぁスムーズなんだこと。ホントに滑るようにレバーが動くもんだから、フィルムがちゃんと噛んでいるか心配になるくらいスムーズ。

実は以前に整備されたM3を触らしてもらったことがあるけど、本機ほどなめらかではなかった。
そのときですらすげーって感心したのに、M3の10分の1にも満たない金額の国産機が上回ってるのだからさらに驚きだ。

だからこそこの巻き上げを体感するだけでも買いだ。

フィルムカウンターは減算式

装填したフィルムに応じて始めにセットする。例えば36枚撮りなら36にセット。減算式のカメラを使うのが初めてで、あるとき10指してるのを見てまだ26枚も撮れるなぁと勘違いしたのはいい思い出。

ただカウンターは加算式のがいいね。はじめにセットするの忘れがちで、気づいたときには何枚撮ったかわかんない。

フィルムの巻き戻しにも一工夫

通常時

巻き戻しノブを2~3回まわすと、ノブが勝手に浮き出てくる仕様になっている。
バルナックライカみたいに最初から大きなノブをつけなかったのは、軍艦部の出っ張りをすこしでも小さくしようとするトプコンのデザイナーのこだわりだと思う。

2~3回ノブを回すと伸びてくる

シャッター速度は1/500

本機はSEIKOSHA-MXLが搭載されており、B・1から1/500まで切ることができる。
500も出れば撮影時に苦労することはなかろう。詳しくないが、SEIKOSHAのシャッターは当時の高級品らしい。

シャッター速度は倍数表記で書かれているが、距離はフィート表示である。時代を感じさせるなぁ。

レンズの焦点距離は44mmでF2の明るさ

50mmが標準って言うけど、実際もう少し広ければ・・・と思うことがよくある。
それに対しての答えかどうがわからないけど、本機搭載のレンズはトプコール 4.4cm、44mmだ。50mmに比べてほんのちょっと広角寄り。
このほんのちょっとが街撮りでいい感じになる。
じっくりポートレートは向かないけど、4~5人での写真とかいい感じかも。私にはそんなシチュエーションないんだけど。

開放はF2と明るい。暗めの室内でもいい感じに撮れるだろう。
ただ最近のフィルムはISO400が主流になってきているから、晴れた屋外で開放で撮ろうと思うと厳しいな。絞らざるを得ない。

そしてこのレンズが実によく写る。ぜひ作例を見ていただきたい。なにやらあのライカのズミクロンと同じで空気レンズ構成になっているとか。

ファインダーは等倍でパララックス自動補正

Topcon35-Lは等倍ファインダーが搭載されている。すごい。
撮影時の楽しさってファインダーを覗くところにあると思うだけど、やっぱりいいファインダーを覗くと、自然といい写真が撮れるような気がする。・・・気がするだけ。

残念ながら本機のファインダーには少々クモリがある。ほんの少しモヤっとした感じ。とはいえ二重像はキレイに出ているし、ブライトフレームもよくわかる。撮影に不便はない。

軍艦部を外して清掃したいけど、下手に触ると二重像が薄くなったり、この滑らかな巻き上げの感触がなくなってしまうと考えるとこのまま使うのがいいと思う。

ただキチッと清掃された個体だとどんなファインダーの見え方をするのか気になる。クモリがあってもこうなのだからOH済の個体を一度体験してみたい。

もう一つ、パララックス補正って言葉に馴染みがない。調べるとパララックスはファインダーとレンズの誤差らしい。
一眼レフはレンズからの光が反射してファインダーに届くため見たものがそのままだけど、Topcon 35のようなレンジファインダー機はファインダーとレンズに差があるから、それを補正するためにフレームが動くとのこと。すごい。

検索中に生きているファインダーって言葉が目についた。Topcon 35と同時期に発売されていたコニカの機体に搭載されているようだ。こちらもぜひ味わってみたい。50年代の国産レンジファインダーの気合いのはいりっぷりはすごいね。

ついに買ってしまった。

トプコンメーターと専用フードをつけて完成形

なくすのが怖くてディフューザーはつけたまま

Topcon35-Lには専用の露出計「トプコンメーター」がある。
本機を買った中古カメラ屋さんが後日仕入れてくれた。なかなか貴重品らしい。

動くかわからない状態で仕入れたみたいだけど、店先で二人で光に当てると針が反応した。数値はだいたいあってる感じだ。
本機がライトバリューであるため、トプコンメーターもライトバリューになっているのがおもしろい。製造はセコニック

このメーターの注意点はカメラの前からホットシューにスライドして装着するところ。
ずっと後ろから装着しようとして店主と入らない入らないいいながら苦戦していのは恥ずかしい。

専用のフードもある。
かぶせ式で四角いタイプだ。このフードも貴重品で単体で買おうとするといいお値段がするとのこと。

作例

まずはカラー

Topcon 35-L, FUJIFILM 業務用100

なにげに撮った1枚目。
なに、このフリースの質感の良さと立体感。肉眼でもこんな風に見えなかったし、これがトプコールレンズの実力か。
この写真が現像から上がってきただけでこのカメラが好きになった。

Topcon 35-L, FUJIFILM 業務用100

パネルに反射する雲からの光をよく捉えている。

Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

新興住宅街をパシャリ。

Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

絞って撮ったと思うけど、用水路の奥の方の石垣まできっちり表現されている。

Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

学校の校庭だったかな。フェンスの落書きがいい感じ。

Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

空の青さが気持ちいい。信号が赤に変わるまで待った方がアクセントになって良かったかも。

Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

夕日をライト代わりに、あるご家庭の花壇をパシャリ。右上の枝が浮かび上がっていて気持ちいい。

Topcon 35-L, FUJIFILM 業務用100

紅葉を撮りに行った時のもの。もうなんというかスゴいとしか言葉が出ない。
そもそもTopcon 35-Lの時代はモノクロネガの時代だと思うんだけど、カラーで撮ってもこんなに色のりがいいなんて、よっぽどレンズがいいんだろうね。

Topcon 35-L, FUJIFILM 業務用100

この写真もいい色合い。日が陰ってしまったのが残念。

Topcon 35-L, FUJIFILM 業務用100

トナカイさんの毛並みと、その足元の落ち葉の描写に惚れ惚れする。

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Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

太陽に向けると見事にゴーストが出た。さすがに逆光耐性はないか。それにしてもキレイな五角形だ。尾びれがついて流れ星に見える。

Topcon 35-L, Kodak ULTRAMAX 400

トワイライト。水面に伸びる影の描写がいい感じ。

時代に合わせてモノクロフィルムでも撮ってみた

Topcon 35-L, ILFORD SFX 200

ビルのガラスに反射するタワークレーン。

Topcon 35-L, ILFORD SFX 200

町中のカップルをパシャリ。女性の立ち方がいいアクセント。うらやましい。

Topcon 35-L, ILFORD SFX 200

絞って大阪駅。直線基調のものはモノクロによく似合うね。水平が取れていないけど。

Topcon 35-L, ILFORD XP2 Super 400

C-41現像できる面白い白黒フィルムを詰めてスナップショット。
この日は成人の日。晴れ着の女性がたくさんいた。コントラストが薄いのは腕の問題か。

Topcon 35-L, ILFORD XP2 Super 400

着物の模様がキレイに表現されている。
関係ないけどモノクロ写真だと想像がかきたてられる。この写真も成人式で久しぶりに会って、話が盛り上がって2人でアフターして、次どこいこっか?って話し合ってる感じかな。知らんけど。

Topcon 35-L, ILFORD XP2 Super 400

開放で撮った写真。後ろは暴れ気味。気持ちよさそうに背伸びをする女性の像がキレイに浮かび上がっている。

まとめ

「海のニッコー、陸のトーコー」と呼ばれた名門の東京光学。さすがクラカメブームの時に高値をつけていただけあって、所有感を満たしてくれるすばらしい造りのボディと、腕が上がったかのように感じるほどよく写るトプコール4.4cm F2。実にすばらしい。
1950年代の気合いの入った国産レンジファインダーにハマってしまいそうだ。

市場価格は外観の状態は別として、きちんと撮影できる個体であればネットで1万円でお釣りがくるぐらい。店頭販売価格も1.5万円ぐらいだろう。少し値が張るが整備済みの個体ならば、さぞ素晴らしいだろう。

実はこのカメラが私にとってはじめての露出計がないカメラだ。最初は不安だったが、作例のとおりネガであれば勘でどうにかなることがわかった。専用のトプコンメーターも手に入ったが、壊すのが怖くて使うことはないだろう。

このカメラはこれからも大切に使っていきたい。

コマ滑りが発生したのでオーバーホールした。

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