フィルムメーカのカメラは良く写るというが、このカメラも当然良く写る。そして美しい。
外観
この時代の蛇腹カメラは「ザ・カメラ」といった具合でどこか画一的でデザインに面白みがないんだけど、このカメラは一目見ただけで違うと分かる。
軍艦部からの曲線を描いたデザインは無骨な印象を和らげ、そして気品さを纏っているがごとく優美だ。
優美さだけではない。機能もしっかりしている。
シャッターはSEIKOSHA-RAPIDが搭載されており、B・1~1/500まで切ることが可能。実用に申し分ない。またSEIKOSHA-MXが搭載された後期モデルもある。
レンズはFUJINAR 75mm F3.5が搭載されている。なじみ深い「フジノン」銘ではないため、つい言い間違いをしがち。最後の作例を見ていただきたいがこのレンズがとても良く写る。
スタートマーク方式が採用されており、自動巻き止めになっている。ただセルフコッキングではないので、シャッターチャージは別でやらなければならないので注意が必要だ。
それでも赤窓から覗いてフィルムを送る必要がないだけでも全然OKだと思う。
フィルムカウンターは巻き上げノブに組み込まれている。なかなか面白い場所にあるが、これが視認性が高く至って合理的だ。
ちなみにこの巻き上げノブはサイズが大きくフィルムの巻き上げがラクにできる。
フィルムカウンターの右下に穴が開いたボタンがついているが、これは多重露光防止機能である。このボタンを押さないと巻き上げができない仕組みとなっており、コマ被りを防いでくれる。フィルムが高い今失敗を防ぐ機能はありがたい。
なお、機種によっては軍艦部にボタンがついているものもある。
そして色でも巻き上げの状態が分かるようになっている。レリーズボタンの左下に丸い形の窓があり、ここが白であれば巻き上げ前、赤であれば巻き上げ後である。
フィルムメーカだけあってよく考えられておりさすがだ。
純正ケース
本機にはアイレットがないため、ケースがないと少々不便を感じるだろう。
純正ケースもオシャレだ。革だけでなく金属も併用されており、なかなか丈夫に出来ている。FUJICA-6の部分が銘板になっているのもアクセントとして良い。
ケース単体ではあまり見かけないので、購入するときはケースとセットになっているものを選びたい。
元箱
珍しく元箱もついてきた。時代を感じるいいデザインだ。
フード
この時代のレンズなので是非ともフードを装着したい。
理想は純正のフードだけど、たまに見かけるが結構なお値段がする。フジにかかわらず年代モノの純正はすべてそうだ。ありがたいことに本機のレンズは36mmなので活用できるフードは多いはず。
自宅のガラクタ箱を漁るとオリンパス35用の角形フードが発掘され、これが合致した。写真を見てもケrれず常用できている。
作例
正直なところ驚いた。ブローニーフィルムを使うだけあって余裕のある写りであることは想像できたが、現像上がりの結果は想像を大きく上回った。
あまりの驚きで感想をうまく言語化できないんだけど、クセのない綿密な描写で撮り手の意図をうまく汲み取ってくれるレンズだと感じる。
例えば坂の写真。坂の下まで人や構造物までクッキリ写したかったので絞って撮影した。すると見事に解像している。すばらしい。
他にもローライフレックスを持ってる写真やトランペットを吹いてる写真。できる限り絞りを開けて主題を明確にしたかったが、これも期待通りの気持ちのいい立体感で描写されている。すばらしい。
色のりに関しては当時のレンズらしくあっさりした印象ではあるが、これはこれで味として活用していきたい。
おわりに
このカメラはいい部品が使われているからか壊れているものはあまり見かけないが、距離計のズレと蛇腹が劣化している個体を見かける。
距離計は調整すればいいものの、蛇腹がダメな場合はやっかいだ。できる限り現品を確認の上購入したい。
しっかり動くものはうっとりするような写真が撮れる。
蛇足だけど、フジのカメラということですべてフジのフィルムで撮影した。PRO 160NSも生産終了して久しいが、最終ロットも2024年で期限切れとなる。さみしい限りだ。
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