特徴的デザインの広角カメラ「コーワSW」

フィルムカメラ

このカメラを特徴づけるのはなんといってもデザインだろう。「シンプル・イズ・ベスト」まさにこの言葉がよく似合う。

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前面

このカメラは1964年に発売された。当時は高度経済成長の真っ只中。東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が開通し、都市高速も整備され、誰もが希望に満ちた「未来」を想像していた時代であろう。

その時代に発売された本機は実に「未来的」なデザインをしている。かなり攻めているといっても過言ではない。

発売元は興和(コーワ)である。キャベジン・コーワを筆頭に医薬事業で有名な会社だが、昔はカメラも製造していた。二眼レフのカロフレックスなんかは一度は耳にしたことがあるだろう。

馴染みは少ないかもしれないが現在も光学事業はやっており、スコープやマイクロフォーサーズ用のレンズでは現役である。コーワのプロミナーブランドは名門だ。

さて本機は「SW」という名からも想像できるように広角カメラだ。28mmの自社製レンズを搭載しており、描写はかなり良好である。

また質感も極めて良好だ。シンプルだからこそ粗が目立つものだが、各部品の精度は高く、デザインに負けないパッケージ力は見事である。

前面にはレンズシャッターとファインダーしかない。それでもこの見事な存在感は唯一無二でなかろうか。

軍艦部

軍艦部もシンプルである。レンズシャッター機だから軍艦部で弄るところはなにもない。

またシャッターボタンも巻き上げレバーも高さがすべて揃っていて、出っ張りがないように造られているのが意匠の妙だ。

巻き上げレバーは非常にスムーズ。同時代のニコンFのようにゴリゴリ感はなく、どことなくライカっぽい。

個人的にいいなと思うのはフィルムカウンターがセンターにあるところ。大概のカメラは端にあるんだけど、軍艦部で確認するのって残りの撮影枚数ぐらいなんだからそれがセンターにあるのはいかにも実用本位でいい。

背面

背面にはファインダーとフィルムインジケーターしかない。至ってシンプルだ。

裏蓋は開閉式だ。内部は清潔だと思う。

レンズ

コーワ自社製の28mm F3.2のレンズが搭載されている。距離計はなく広角の被写界深度で撮る感じ。だからF値も3.2なのかな。

最短は0.5m。目測で最短は難しいからある程度絞って撮りたいね。

光学の状態はチリ・ホコリとキズが散見される。時代を考えれば仕方がない。

絞り羽根は5枚。

シャッター

シャッターはB・1~1/500。SEIKOSHA-SLVが搭載されている。デザインに恥じないいいシャッターが搭載されている。

ファインダー

本機のファインダーはプリズムが贅沢に使われたケプラー式。あの小さな逆三角形からは想像できない光景をみることができる。さすがは28mm、覗けば画角は広く、しかも明るい。ライカのファインダーとは違う良さがある。

この個体はファインダーにカビが回っており、購入店によって整備されたもの。残念ながらすべてのカビを取り除くことはできず、右端にカビ跡が残ってしまっている。

作例

KOWA SW, KOWA 28mm F3.2, FUJIFILM 業務用100

目測機ならなではの絞っての撮影。

非常にシャープな写りをしている。やっぱり28mmの縦構図は広いね。

KOWA SW, KOWA 28mm F3.2, FUJIFILM 業務用100

珈琲屋さん。

歪みが少なく隅々まで解像している。

KOWA SW, KOWA 28mm F3.2, FUJIFILM 業務用100

都市高速。

線がシャープだから境界がクッキリ。

KOWA SW, KOWA 28mm F3.2, FUJIFILM 業務用100

陰。

ブロックの凸凹模様がクッキリ描写されているのはお見事。

KOWA SW, KOWA 28mm F3.2, FUJIFILM 業務用100

空。

コーティングがしっかりしているのか、発色はよさげな傾向。青空が気持ちいい。

さいごに

ここまで紹介したとおり素晴らしいカメラなのだか、問題点は結構いいお値段がするところだ。

執筆時点で「J-カメラ」や「カメラファン」で検索すると状態の悪いモノで3万円台、良品・美品だと4~5万円、下手すりゃ6万円台のプライスを掲げているところがある。ヤフオクですりゃ2万円台が相場だ。

クラカメブームの際はもっとしていたとカメラ屋の店主の談だが、今でも結構値がはるカメラなので、できる限り保証付の個体を購入されたい。

また付属品にも注意が必要だ。本機には専用のフードがあるが、これを単体で購入しようものならかなりの労力を要する。私は1年間探してやっとフードを見つけられた口(かなり高い)なので、できる限りセットになっているものを買おう。

もし店頭で本機を見かけることがあれば、ファインダーだけでもぜひ覗いてもらいたい。絶対に虜になるはずだから。

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