ブラックペイントの誘惑

フィルムカメラ

フィルムカメラには今のデジタル機と違って様々な個性がある。そのうちの一つ「塗装」に焦点を当てたい

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ブラックペイント、それは特別

最近のデジタルカメラといえば「ブラック」のイメージが強いが、フィルムカメラ時代は「シルバー」がメインだった。

例えば有名なニコンFだと、発売された当初は一般向けにはシルバーしか展開されていなかったし、二色展開されているカメラでも、ブラックはシルバーに比べ価格差が付けられ高価であるものがあった。ということもあって個体数も少ないし、それだけ特別なのである。

またブラックペイントは使えば使うほど表情を変えてくれる。当然ペイントなんで擦れたりすると剥げるわけだけど、その際に見える下地がそのカメラの歴史を物語ると思う。

カメラは写真機だから使われてナンボだと思っていて、下地が見えてる個体はここまで剥げるのに、どのくらい使われて、どんな写真を写し撮ってきたのだろうと想像するだけで悠久のロマンを感じる。

特に下地が真鍮のモデルは黒と金の対比で美しさが際立ってたまらない。

また剥げるくらい使われてきたのだから、ずっと防湿庫でしまいこんであった個体よりも状態もいいだろう。

塗装が剥がれ下地の真鍮が見えてる様子

ブラックでも焼付塗装のものもある。塗装が強い分、劣化しにくいので当時の美しさを保ってくれるけど、経年と共に変化する美しさは儚さも相まってたまらないね。

ブラックペイントなフィルムカメラたち

ここでは手持ちのブラックペイントなフィルムカメラのうち、下地が真鍮のカメラを紹介したい。なお参考程度に相場も記載するが、完全に主観なことをご了承いただきたい。

CANON「F-1 後期型」

F-1 後期型

キヤノン F-1後期型。相場:約20,000円(執筆時点)

言わずと知れたキヤノンのフラッグシップモデル。キヤノンカメラミュージアムの紹介を引用すると

5ヵ年の歳月、数十台分の開発費に匹敵する膨大な投資と労力、キヤノンの技術の総力を結集して誕生した最高級の35mmシステム一眼レフカメラである。

とあり、いかに気合いを入れてライバルメーカーに追いつけ・追い越せを目指したかがよくわかる。
特に露出計を本体に組み込んだのがスゴイよね。徹底的にライバルを分析したのが良くわかる。

この後はNew F-1になるわけだけど、ペンタ部のスッキリした見た目から通常のF-1のがいい気がする。

本機は全てブラックモデルだ。どれを買ってもブラックペイントを楽しめる。なんならロゴまで真っ黒だ。
本来はロゴに色が入っているけど、この個体は以前のオーナがロゴ部分を墨消ししたようだ。

こういう個体は価格も安い上に、こだわりのあるオーナー品だから手入れもされていると想像できるので大好きだ。事実、大変調子がいい。

カメラを構えて、右上の角の真鍮の見え方がたまらんよね。

CANON「New Canonet QL17-L」

New Canonet QL17-L

ニューキヤノネットQL17-L。相場:約8,000円(執筆時点)

キヤノンが発売したキヤノネットシリーズの一つ。40mm F1.7の明るいレンズを搭載し、従来のキヤノネットシリーズから大幅な小型化と軽量化を実現したモデル。AEカメラなのでピントを合わすだけで簡単に撮影でき、少し手間取るフィルムの装填にはキヤノンご自慢の「QL:QuickLoading」を採用。誰でも簡単に使えるようにしたカメラだ。

キヤノンはハーフカメラの「デミシリーズ」もそうだけど、普及帯カメラも手を抜かずいいものを作っているよね。

こういったファミリー層向けのカメラにも数こそ少ないがブラックモデルは存在している。

この個体はカメラを構えて右手部分が見事に剥げて下地が見えている。底面も下地が見え隠れしているのがたまらないね。

さて、この個体を見て違和感を覚えた方は正解。本来のブラックモデルであればレンズ鏡筒部も全てブラックであるんだけど、これはシルバーになっている。ということは、いわゆる「ニコイチ」された個体になる。カメラ屋の床に転がっていたんだけど、これに気づいてすぐに購入した。もちろん買い叩いたが。

わざわざニコイチされているだけあってファインダーはクリアだし、シャッターも露出計も快調そのもの。いい買い物ができた。

なお電池はMR-9(H-D)なので注意が必要。

KONICA「AUTOREFLEX T3」

KONICA AUTOREFLEX T3

オートレフレックスT3。相場:約5,000円

コニカから発売された一眼レフ機。いかにも「ザ・カメラ」のような見た目で質実剛健さを感じる。

ヤフオクを漁ってるとペイントが剥がれた部分がちょうど良かったので落札した個体になる。この感じ、いいよね。

状態は油切れでフィルム1本につき2〜3回ほどミラーアップしてしまう感じ。それでも露出計は大体あってたのでAEも問題なく動作した。

そもそもコニカの一眼レフ機ってあまり見かけない。「Acom-1」とか「FS-1」をたまに見かけるくらいかな。

小西六時代からヘキサノンといえばよく写る代名詞だったけど、このARマウントのレンズも多分に漏れずよく写るんよね。フランジバックが短いのが影響してると思うけど、再評価の流れが来てほしい。

電池はMR44(H-C)を使用する。この電池は今では製造されていなく代替電池を使用するしかないが、同じサイズのSR41等を使うと、電圧が標準より高くなってしまい露出計にズレが生じる。それを防止するために降圧対応の変換アダプタも販売されているので活用して欲しい。

NIKON「Nikon F」

NIKON F

ニコンF アイレベルファインダー。相場:約25,000円(執筆時点)

もう語り尽くされた有名なカメラなんで能書は省略。この個体は「ニューF」になる直前のものになる。

惹かれたのはこの真鍮の見え方。もうたまらんでしょう?

バルナックライカのような光沢のある塗装に、金色に輝く真鍮が見えてるもんだから、使うたびに惚れ惚れする個体。

海では潮風を浴び、冬の雪国では雪を浴び…と、かなり使っているが、全然びくともしないのはさすがFといったところ。私がどこまで真鍮を見せることができるか、過去のオーナーから試されているかのようにすら思える。

ちなみにこの個体はカメラ屋のダンボールの中にあったのを見つけて購入したもの。快調なニコンFも少なくなってきているし、今後も大切に使っていきたい。

NIKON「Nikon SP」

NIKON SP

ニコンSP。相場:約250,000円(執筆時点)

ニコンのレンジファインダー機(S型ニコン)の最高峰。ニコンFの元になったカメラでもある。

S型ニコンのブラックペイントはライカみたくとんでもない価格になる。例えばニコンS2のブラックペイントなら80万円を超えるものも見かけるぐらいだ。

高額になるということは別の問題もある。
シルバーのモデルに製造者ではない者がブラックのペイントを施した、いわゆる後塗り品(リペイント)が存在する。

憧れのブラックは高いからシルバーのモデルに後塗りして安く手にしたい思いもあれば、騙す目的で黒くして高く売ろうとする思いなど様々だろう。また後塗り品にも色々あり、粗悪なものから、オリジナルと見分けのつかないものまで様々。こうなるとオリジナルかリペイントか、真贋の見極めが問われる。

私もポンと大金を払える資産家ではないので、このSPも後塗り品になる。ただちゃんとメッキを剥がし塗装されているので、後塗りの中ではいい仕事をされている個体だ。

また巻き上げが軽く、シャッター音も小さく上品でいい音がしているので、後塗りに際に整備されたのかなと推測している。

もしかしたら枠の真鍮の見え具合は、ジーンズのように意図してダメージ加工されたものかもしれないね。

MINOLTA「SR-T101」

MINOLTA SRT101

ミノルタSRT101。相場:約3,000円(執筆時点)

ミノルタのベストセラーの一つ。機械式シャッターから電子シャッターへの移行が早いメーカーなので、メカニカル機ではこの機種がトップじゃないかなと思う。

CdSによる上下2分割測光することで、屋外での露出を外さない謳い文句でロングセラーを記録した。

カクカクしたデザインに、重くて頑丈な筐体、シャッターを切った時の金属音が特徴的な本機だけど、なんせ堅牢なので、ジャンク品でも動いてしまう個体が多い。

中級機ではあるけど、ブラックモデルは艶のあるペイントが施されており、下地が見えた個体をあまり見たことがないね。もしかしたらそこまで使い込む機種ではないとの見方もできるけど…

SRT101は巻き上げがゴリゴリなイメージがあったのだけど、この個体は滑らかな巻き上げで

機械式カメラなのでシャッターを切るには電池は不要だけど、露出計を動かすには電池が必要だ。標準ではMR-9(H-D)電池なので、互換電池を用いるか、SR43から変換アダプタを使用することで正確な値になる。

PENTAX「PENTAX SP」

PENTAX SP

ペンタックスSP。相場:約5,000円(執筆時点)

世界的に爆売れしたフィルムカメラ。オールドレンズの代表格とされるM42マウントを採用し、かつ安価であることから、フィルムカメラを新しくはじめる若い方にも受け入れられている。

突然Pentax S2以降のカメラが欲しくなり近所のカメラ屋に赴くと、ちょうどペンタックスマニアが20台近く持ち込んだタイミングであった。その中から店主と検品を兼ねて丹念に動作確認をして、一番状態が良かったものを選んだ。そのため外観に剥げはないが、その分フィルム室は清潔だし、ファインダー内はゴミ一つ存在しなかった当たり個体。

ブラックモデルは上記のSRT101とは違い、マットで上品な仕上げとなっている。

使い勝手でいくと、セールスポイントの露出計は絞り込み測光ということもあって、測光する度にいちいち暗くなって使いにくい。さらに使用電池がMR-9のため現在は製造されておらず、解決策として互換電池を用いるか、裏蓋交換式のPentax SP用の変換アダプタを使うかになる。

ちなみにこの個体は標準で変換アダプタが付いていたので大変お得だった。

露出計以外の部分の性能は、必要にして十分のスペックがあり、安定的なカメラとして優秀だと思う。ただもう少しスクリーンが明るければ…と思うところはある。

中級機なのである程度の妥協は必要よね。

その他

手持ち以外だとオリンパスの「TRIP 35」や「PEN W」なんかも美しい塗装をしている。

ただどちらも数が少ないのもあってかなり高価であり、いまだに入手には至っていない。

ぜひブラックペイントが放つ妖艶な魅力を感じ取ってもらいたい。

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