いつものカメラ屋に赴くと、カウンターからこのカメラを取り出され手渡された。
店主のイタズラっぽい笑みと共に「ほら、コンタックス」と。
前面に「Yashica」と書いてあるので一目でヤシカ35と分かったが、改めて見たらコンタックスよりNikon S2のが似ている気がする。
パパッと確認すると外観はまずまず、レンズもまぁまぁ、ファインダーはクモリ、距離計はわずかに縦ズレといった感じで実用上は問題ない。
値段を聞いたら飲み会1回分だったのでこれも何かの縁かと持ち帰ることにした。
外観
ヤシカ初のレンジファインダーカメラ。1958年に発売。
ライカの見た目に近いカメラは結構あるけど、コンタックスの見た目をしているカメラは案外少ない。ライカに似ているカメラが「アイレス35ⅢC」だとすると、コンタックスは間違いなく本機だろう。
このカメラのことを「国産コンタックス」と呼ぶ方もいるが、ヤシカは後年、実際にコンタックスブランドを使うことになるのだからあながち嘘ではないね。
コンタックスな見た目だか、レンズは固定式。コパル社製のシャッターが搭載されており、B・1〜1/500まで切ることができる。実用十分。
軍艦部は露出計がないので至ってシンプルな構成となっている。左の巻き戻しクランクからフィルムカウンター、巻き上げレバーの「丸」が全て揃っていてデザイナーの意気込みが伝わってくる。
その中でも目を惹くのが丸窓のフィルムカウンターだ。大きくてみやすいし、黒で縁取りされているのがいいアクセントになっている。
またフィルムカウンターにはもう一つ役割があって、フィルムが巻き上げ済みかどうかがわかるようになっている。
矢印の右部分が白なら巻き上げ前、赤なら巻き上げ後だ。
個人的にはこの感度インジケータが使いやすくて好き。感度インジケータって背面にあることが多いけど、軍艦部にあると全てが上から確認できる。
底蓋に巻き戻しスイッチがある。フィルムを1本撮り終えたらRの位置にして巻き戻そう。
フィルム室も至ってシンプルだ。
レンズ
ヤシカ35は搭載レンズ違いで2種類ある。F2.8搭載の普及版とF1.9搭載の高級版。
この個体はF2.8搭載だけど、このレンズがめっちゃ写るのは有名な話。後の作例でも写りの良さがわかる。
当時のカタログを読むと、「原子57ランタニュームを使用し、完璧な設計によって、カラー撮影で特異的な威力を発揮する」(要約)とあるのでカラーフィルムで使っていきたい。
フード
店主に薦められた際はカメラとレンズキャップだけであったが、交渉してフードもつけてもらった。しかも、フードを漁ってたら純正品が見つかってラッキー。
当時モノはコーティングが弱いからフードは必須よね。
フードにもヤシカ35用と記載されている。メーカー名が記載されているものは多いけど、機種名まで書かれているものって少ないような。
やっぱり純正フードはトータルのバランスが考えられているから美しいよね。
レンズからフードにかけてのゼブラな感じが、どことなくアンジェニューっぽさを感じる。
作例
カラー撮影に特異的な威力を発揮すると謳っているとおり、色乗りもよく十分な写りをしている。ちょっとポジフィルムでも撮ってみたいと思った。
アスファルトの粒状感でわかるとおり、解像度はお見事。ボケもうるさくなくキレイに撮ることができる。
こんなカメラが当時12,550円の廉価で発売されたのだから素直にすごいと感じた。
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