黎明期の上品な一眼レフカメラ「ペンタックスAP」

フィルムカメラ

いつもお世話になっているカメラ屋に行くと、舶来品カメラの棚になぜかペンタックスが鎮座していた。うん?と思い目を凝らすと、前面にスローダイヤルが付いている。そう、これは初期の特徴だ。

店主に「これは?」と聞くとニコニコと「気づいた?」と笑みを浮かべ、棚から出してくれた。さらに「なんだペンタックスかと思わずとりあえず触って欲しい」とまで言う。

触るとすぐに言葉の意味がわかった。まず巻き上げが滑らかなのである。ゴリゴリじゃない、スーッと巻き上がる。次にシャッター。これまたガシャンではなくコロンと低く上品な音がする。そしてファインダー。これは少し暗いもののピントのヤマが大変わかりやすく、ピント合わせが楽しい。

もう心を奪われた。

追い打ちをかけるように「安くしておくから買って」と。

その言葉通りとても安い。プリセット絞りの初代タクマー 58mm F2とセットにも関わらず、言われた値段はホントに安く、下手すりゃレンズ単体でも買えないぐらいだ。

もともと故障品で入荷したのを修理したから工賃ぐらいしか載っていないんだろう。

もう即決で買って、すぐにフィルムを詰めて撮影に出かけた。

外観

このカメラの発売は1957年である。

あのニコンFが1959年だから、その2年も前にちゃんと使える一眼レフとして完成されたカメラ発売されているのだから驚きだ。

国産一眼レフカメラの歴史は言うまでもないが、「ミランダT」が最初にペンタプリズムを乗っけたカメラとして発売された。ただこれは巻き上げないと映像が表示されずブラックアウトした状態であり、欧州の一眼レフに多い方式であった。

それを解決すべく旭光学が開発した「クイックリターンミラー」が最初に搭載されたのが、このペンタックスAPである。いつ覗いてもファインダーに映像が表示されるようになり、フレーミングがとてもやりやすくなっただろう。

ただ本機も自動絞りには対応していなく、レンズの絞りを小さくすれば暗くなってしまう問題は残っていた。

これを解決したのは帝国光学が発売した「ズノーペンタフレックス」である。最初に自動絞りに対応し、今の「一眼レフカメラ」として完成したわけだ。

ただ現存している個体は十中八九故障しているだろうし、実際にプロユースに耐えられる完成された一眼レフカメラは「ニコンF」が最初であるのは言うまでもない。

そんな一眼レフ黎明期に発売されたこのペンタックスAPだけど、イメージ的にはウエストレベルファインダーが搭載されたアサヒフレックスにペンタプリズムを乗っけたもんだと理解している。

そのペンタプリズムであるが、なんとも滑らかな外観処理が施されており、直線的でありながらもとても優美なデザインにまとまっている。

旭光学のトレードマークである「AOCOマーク」も輝かしい。

マウントはプラクチカマウント(M42)を採用している。旭光学のレンズだけでなく世界中の数多あるオールドレンズを楽しめるだろう。

シャッター

軍艦部

本機のシャッタ-はB・1/1~1/500である。当時のカメラだけあってシャッター速度は控えめだ。1/25以下のシャッタースピードは前面にあるスローのダイヤルで設定する。バルナックライカと一緒の方式だ。

この後に発売される「ペンタックスK」から1/1000シャッターが搭載されるようになった。

巻き上げレバー

巻き上げレバー

本機のお気に入りポイントが巻き上げレバーである。この削り出しの立体的な曲線が指にフィットする。プリズムの三角と相まってなんと曲線が優美なデザインだろうか。

巻き上げレバーだけでない。巻き上げ自体もとても滑らかである。整備されたライカや、国産最高峰の巻き上げと思っているトプコン35-Lにも負けないほど滑らかなのだ。とにかく巻き上げて、この滑らかさを体感いただきたい。

ちなみに銀一のシャッターボタンが付いているが、これは買った時から付属していたもの。わざわざ別売りのシャッターボタンを付けるあたり前所有者がこだわりの強い方であったのが想像できる。

巻き戻しはクランク方式

巻き戻しクランク

巻き戻しはクランク方式で巻き戻ししやすい。

その下にはASA感度(ISO感度)が設定できるようになっている。露出計は搭載されていないので、どの感度のフィルムを入れたか忘れないようにする機能だ。

背面

背面

背面は至って普通の一眼レフカメラである。背面カバーは固定されているので開け閉めがラクにできる。

ところで気になるのは左下に刻印されている「NO TAX」だ。なんだろう、物品税の対象外ということだろうか。

ファインダー

スクリーン

この固体はスクリーンがキレイで、ピント合わせがやりやすい。

スクリーン自体は暗めであるが、ピントのヤマがわかりやすく撮影がしやすい。

注意が必要なのは自動絞りではないので、ピントを合わせる時はレンズを開放に近い状態にして、シャッターを押すときに絞りを小さくするのを忘れないこと。

開放のまま撮ったら場面によっては露出オーバーになってしまうだろう。もう何度失敗したことか・・・。

まとめ

ペンタックスといえば大ヒットしたSPやSP Fが思い浮かぶが、「アサヒペンタックス」として発売されたこのカメラもすごくいい。

なんとも上品だし、使ってて楽しくなるカメラだ。とても黎明期の製品だとは感じられない。

レンズマウントもM42を採用しているからオールドレンズ母艦としてもいい仕事をしてくれると思う。

そして何より巻き上げのよさ。もうこれだけでワクワクしてくる。

ただ経年に伴って市場にあるものは故障している個体も多く、できれば整備された個体で気持ちよく使いたい。故障品を整備に出したら結構するから、できれば整備済みを買いたいね。

作例はこちらで。

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