ライカのレンズは目を見張るほど高いモノが多いけど、このレンズはかなりリーズナブルに購入することができる(ライカにしては)。
もしカメラ屋の店頭で見かけたら1本買っておいて損はない。
外観

ズミタールはライカのハイスピードレンズである。焦点距離は50mm、開放F値は2.0。
沈胴式ということもありオールドレンズ然とした佇まいだ。ただレンズ口径が大きいからか、エルマーとかに比べるとかなり現代的な印象を受ける。
50mmでF2といえば「ズミクロン」が代名詞だが、そのズミクロンの先代モデルにあたるのがこのズミタールだ。
ライカのハイスピードレンズの歴史は「ズマール」→「ズミタール」→「ズミクロン」と変遷しており、最近はズミタールよりも初代のズマールの方が高いプライスが付いていることが多い。
ズミクロンは言うまでもなく素晴らしいレンズだが、このズミタールもなかなかいい。なんたって1939年から1955年まで発売されたロングセラーモデルだから。
製造年月が長いということは当然バリエーションもあり、「絞りの形」と「コーティングの有無」で分けられる。一番人気は「丸絞りのコーティング有モデル」だと思っている。

シリアルナンバーからこの個体は1951年製であることがわかる。かなり晩年に製造されたモノ。戦前に製造された個体はノンコートだが、戦後に製造された個体はコーティングされており、描写性能の向上が図られている。
よほどのこだわりがない限り、戦後型を選ぶ方がいいと思う。

沈胴させるとコンタックスの「ゾナー 5cm」に見える気がする。
絞りはF2~F16まで。

マウントはL39。M型ライカで使うためにはL/Mリングが必要になる。

同じF値で同じ50mmのトプコールと比較してみたけど、高さはほぼ同じだった。
光学

スカッと抜けていて気持ちがいい。前玉、後玉ともにキズはないけど、一部チリ・ホコリの混入が見受けられる。

本個体の絞りは六角形である。なかなか大胆な六角形だ。
特殊なフィルター径

ズミタールはレンズ口径はΦ36.5mmで特殊なサイズになっている。しかも前玉の湾曲ぐあいが大きいため、通常のフィルターでは干渉してしまう。ズミタールは前玉が柔らかく傷つきやすいので、是非フィルターをつけよう。
幸いケンコー・トキナーからズミタール用のフィルターが発売されている。

フィルターに段差があり、干渉しないようになっている。
作例

線路際。
期待以上の解像度ではないだろうか。フェンスの格子がしっかり描写されている。

車内。
金属の持ち手の冷たさが伝わってくる。色のりは濃い印象。

前方後円墳。
古墳を構成する石が細かい。空の青さもいい感じ。

はにわ。
いい立体感。ピントの合っているところはなかなかシャープ。

古墳の前方部。
夕暮れ時で逆光という条件の悪い環境での撮影だけど持ちこたえてくれている。

夕暮れの明石海峡大橋
橋のトラフ部分が潰れていない。

釣り人。
曇りだったからF4ぐらいだと思うけど、合焦点はよく解像していると思う。海の波の描写も好き。
さいごに
このレンズは私が最初に買ったライカのレンズになる。
当時ライカの知識はまったくなく、ただ漠然とライカに憧れがあって、最初の1本が何がいいとカメラ屋の店主に聞いたら「ライカで一番コスパがいいからこのレンズにしておきなさい」と言われ購入したものだ。
実際に使うとコーティングされてるだけあってカラーの色のりもいいし、解像力もなかなかのものだ。鏡胴の造りも満足だ。そしてライカのレンズがこれだけ高騰している中、2022年現在でも5万円しないのは破格だと思う。確かにコスパがよいというのは頷ける。
冒頭の繰り返しになるけど、1本買っておいて損はないレンズだ。
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