ライカのレンズは良く写る。
ただ代名詞的なズミクロン 35mmやズミルックス 50mmが取り上げられるばかりで、望遠レンズはあまり聞かない。
しかしどのカメラショップもライカの望遠レンズはすばらしいと口をそろえる。ライツは他社レンズを使うほど広角が苦手だったから、その分望遠にハズレがないという方もいた。
そんな中、馴染みのカメラショップでこの初代エルマリート 90mm ブラックが入荷していた。店主曰く、脂ののりきった時期に設計されたレンズだから写りに間違いないとの太鼓判。
私としても85mm前後の中望遠レンズが気になっていたところだった。
50mmや28mm、35mmと標準から広角よりを使ってきたなかで、画角を絞り込んで撮影したいと思う場面が多々あった。90mmならポートレートから、すこし対象を絞った街撮りまで実に使いやすい距離だと思う。
各社とも85mmの中望遠レンズは高いけど、特に値上がりが顕著なライカのレンズにも関わらず、本レンズは2021年現在も安く購入できる。
「ブラックは少ないから買っとき」と背中を押されたので購入してしまった。
外観
店主にも言われたとおり、この初代エルマリート 90mmは1950年代からのライツの脂がのりきった時代に設計されたレンズだ。
しかも1950年代から1970年代まで製造されたロングセラーなレンズで、後にフードが内蔵された2ndや、長さが短くなったテレエルマリート 90mmと脈々と続いていく90mm F2.8系譜の初代モデルである。
外観はいろんなカメラ屋さんで見かけることのできる「エルマー 90mm F4」を少し太くしたような感じ。ズミクロン 90mmに比べると圧倒的にスリムだ。
状態はというと、いくぶん使用感が見受けられる。特にヘリコイドリングのスレはよく目立つ。並品といった具合か。
口径は39mmでE39のフィルターが使用できる。フードは「12575」が標準のようだ。時を見て揃えたい。
レンズの根元にはグッタペルカが巻かれている。M型ライカに装着するとよく似合うだろう。
よく見ると、被写界深度を表す部分のみ色が異なっている。サファリ色のようだ。他のを知らないからニコイチされてないか不安になる。
ドイツ製の文字が誇らしげだ。
最短撮影距離は1m。フィートとメートルが併記されているからわかりやすい。
実はこのレンズ、ヘリコイドから先を取ることが出来る。取った先端部分を「OTZFO」と呼ばれるヘリコイドに装着することでビゾフレックスにも使用することが出来る。
光学
光学は3群5枚の構成となっている。
光学の状態は非常に良く抜けている。ものすごく厳しい目でみると、中玉にほんのすこしクモリがあるぐらい。写りに影響しないだろう。
カメラショップの店主曰く、これは整備に出したらとれるとのこと。ま、出す必要は無いがとのことだが。
シリアルナンバーは252万台。下記サイトによると1972年製造とのことなので、初代エルマリート 90mmの晩年に製造されたレンズとなる。
絞った。
絞り羽根は12枚もある。真円に近いボケが期待できるだろう。
開放はF2.8、最小はF22だ。
外観の使用感はあるけど、光学はキレイってことは以前のオーナーがしっかりしていた証拠だと思う。
ライカM4につけてみる
おお、なかなか良い感じ。
意外にコンパクトだし、根元のグッタペルカがバッチリ似合っている。
ちなみに本レンズは本体にカチッとはまらない個体が多いみたい。これはカチッとはまるのでよかった。
バランスが悪そうに感じるけど、実際に持つとしっくりくるから面白い。
作例
中望遠レンズだから本来はポートレートだろうけど、残念ながらモデルさんが居ないので「神戸どうぶつ王国」へ。
アメリカパグ。
いやぁ、いい立体感よね。
ピントの合ってるところはシャープで、あご下についている砂がくっきり。後ろのボケもキレイだ。
ペリカン。
羽根が白いから飛びそうになっているけど、なんとか持ちこたえて一枚一枚描写されている。
アルパカ。サマーヘア。
カットの仕方がオシャレだ。このままランウェイ歩いてても不思議でない。
レッサーパンダ。
お顔がマスコットのようでかわいいね。毛並みがバッチリわかるから気持ちいい。
動いている動物をマニュアルで合わせるのって難しいなぁ。
ワオキツネザル。
この毛の描写の繊細感よ。ネガで見たときびっくりしたわ。立体感もすばらしい。
このカットは2Lで焼き増ししたほど。
ワオキツネザル。
なかなかのイケメンよね。「ほら、俺を撮ってくるよ」と言わんばかりのポージング。それにカメラマンがどこまで答えられるか。答えられたかな・・・。
ホント気持ちのいい写りをする。
ワオキツネザルの尻尾。
神戸どうぶつ王国はワオキツネザルが自由に歩いている。すぐそばでワオキツネザルが歩いているなんて経験が無いから、興奮して思わず3カットも撮ってしまった。
しかも売店でこの尻尾のぬいぐるみが売っていたもんだから思わず買いそうになったけど、いい年こいたおっさんがこんなもの手に持って帰りの電車に乗ってたらどう思われるかと考えたら冷静になって諦めた。
もう描写については言うことない。
スナネコ。
肉を食らう瞬間。
ここは暗かったから開放だと思う。ちょっとピント外してるけど許して。
まとめ
現像上がりのネガを見て思わず震えたのは初めてだ。衝撃的だった。ピントの合っているところはシャープな描写で、しかも立体感がすばらしい。ボケも上品だ。
重さも330gちょっとと見た目より軽くて、ライカM4がずっしりしているから安定する。実際、1/8でシャッターを切っても手ぶれしなかった。
開放もF2.8と使いやすいのに、なぜこんな良いレンズが持てはやされないのか不思議でたまらない。ま、高騰されても困るんだけど。
ふらっと大阪のカメラショップを見て回ると3万円~8万円台で売っていて、ボリュームゾーンは4万円台だった。ブラックは5万円台。高騰しているライカのレンズとしてはとてもお買い得だと思う。
動物もいいけど、このレンズではぜひポートレートを撮ってみたい。まずはモデルさんを探さないと・・・。
追伸
「神戸どうぶつ王国」に行くなら神戸どうぶつ王国・ポートライナーセット券がオススメ。入園料は大人1,800円だけど、セット券はポートライナー往復券がついて1,800円。ポートライナー分がなんとタダ!
ポートライナーの三宮駅で購入することができるから、忘れずに購入しよう。
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