このレンズの造りは本当にたまらない。
概要

円筒形の物体がある。まるで造りの良い高級缶詰のようだが、これはレンズである。
1954年から発売されたビゾフレックス用の中望遠レンズである。焦点距離は125mmで明るさはF2.5。当時としてはかなり頑張っているスペックだ。ただし焦点距離については実際のところ120mmもないとも言われている。イメージサークルが大きく、4×5でも少しケラれるくらいでギリいけるとカメラ屋の店主は言っていた。
手にするとわかるがかなりズッシリとしている。50年代のライツのレンズは総じてこの傾向があるが、缶詰を想像して持つとイメージとの差に驚くだろう。一説にはプロジェクター用のレンズを転用したとも言われている。

缶詰はこれらのパーツから構成されている。フードもキャップも一つ一つの品質が高い。所有欲を満たしてくれる。

このレンズはドイツ・ヴェッツラー製とカナダ・ミッドランド製の2種類が存在している。正直どちらが良いかはわからないが、好みの問題で選ぶと良いだろう。当然、両方揃えるのも問題ない。ただしそこまで製造本数があるわけでもなく、3,000〜4,000本ほどと言われている。
見てのとおりフードにも生産地が刻印されている。たまに出品されているものを見ると、これがレンズと「てれこ」になっていることが散見される。カッコ良くないよね。せっかくなら揃ってるものを入手しよう。

ちなみにフードをつけるとこんな感じ。先端に向かってキレイな広がり方をしている。

缶詰の要であるリアキャップ。これがなくなっている個体が多い。購入するときは全てセットのものを選ぼうね。これ単品で出ることはほぼないから。

このレンズの特徴だと思うこの絞り羽根を見てほしい。幾重にも重なる絞り羽根が吸い込まれるような美しい真円を描いている。こんな真円を通して描き出される写真なんて美しいに決まっている。私はこの姿を見て思わず一目惚れをしてしまった。そして気がついたら購入していた。

マウント部からも見てみよう。「007」のオープニングのように、この絞り羽根からジェームズ・ボンドがピストルを撃ってくるんじゃないかと思うくらい美しい。

開放だとこんな感じ。もうガラスの塊だ。

鏡筒を見ていこう。
最短は4フィート。鏡筒はこれくらいの長さになる。

無限遠だとこんな感じ。中望遠ということを考えればかなりコンパクトではないだろうか。

最小絞りはF22になる。
フィルター

フィルター径は58mmである。見てのとおり前玉が結構出っ張っているので、フィルターによっては干渉することも。フィルターのガラス面が外側にあるものを選ぼう。

ライツ純正の58mmのフィルターだと、ノクチやズマレックス用になるので数が少なく高い。たまたま我が家のアクセサリーボックスを漁っていると、キヤノンの58mmフィルターがちょうど使えた。ちなみにこのフィルターも結構高い…。
カメラに装着

ビゾフレックス用のレンズなのでカメラに装着するには色々と必要になる。まずはテリートリングだ。

ヘクトール125のマウント部はスクリューマウントになっているので、ビゾフレックス2型や3型で使う際には「OUBIO(16466M)」が必要になる。OUBIOは三脚座が付いている。
ビゾフレックスの組み合わせは慣れるまでややこしいよね。

ビゾフレックス2型+ライカM4の構成にレンズを装着した状態。
ゴテゴテの違法建築っぽさの中に、どこかALPAのような美しさを感じるのがなんとも不思議でかっこいい!

フードをつけるとグッと引き締まるね。
なんとニコンFマウントでも使える

ビゾフレックスのフランジバックはかなり長い。同じくフランジバックが長くて有名なあのニコンFマウントよりも長いので、マウントアダプタを用意すればニコンの一眼レフカメラでライカのレンズを使うことができるのである。

ニコンFに装着するとこんな感じ。
正直なところビゾフレックスを介してM型ライカで使うよりも使いやすい。
作例













このレンズの良さはF4くらいまでの写りだと思っている。柔らかさと優美さが兼ね備わっていて、なんとも質感高い描写をしてくれる。決してホワホワではない。だけど柔らかい。美しい絵だ。
当然絞ればくっきり写るので、ちゃんと使い分けかができるのが良いレンズの証拠だね。
色乗りも十分。またコーティングも青紫掛かった感じが美しい。
もしこのレンズがMマウントで発表されていたらどんでもない値段になっていただろう。ビゾフレックス用ということもあって執筆現在でも値上がりせず、缶詰のフルセットでも10万円もあれば購入できる。見かけたらぜひ手に入れてもらいたい。
【おすすめフィルム】
コメント